「オマエと真ちゃんってさ、いつから一緒なわけ?」
 帰り道。立ち寄ったコンビニで買った三十円引きの肉まんを半分に割りながら、高尾は唐突に尋ねた。心なしか大きいほうの片割れを受け取り、はほんの少しだけ首を傾げる。
「……生まれる前から」
 は両手で半分に割れた肉まんを持ち、沸きたつ湯気を吐息で吹き冷ました。
「あー……そっち系の話?」
 高尾は剣呑さを孕んだ瞳を細め、からそっと視線をそらして肉まんを頬張った。
「違うわー!」

 かぶりを振って否定するの髪をくしゃくしゃにするように撫で、高尾は笑った。
 秋空はすっかり薄紫に染まっていて、性急な星はもう自分が主役なのだと言わんばかりにまたたいている。道の両脇に並ぶ街頭がいっせいに灯りはじめ、アスファルトが橙色に照らし出された。
「母さん同士仲良くて。生まれた病院も一緒だし、幼稚園も小学校もおんなじで、クラスもずーっと離れたことない」
「うっわ、どんな確率だそれ」
「チッチッチッ、これは確率とかじゃないんだな」

 が舌を鳴らして人さし指を振り、期待を込めて高尾を見た。彼は吹き出しかけたがなんとか堪え、かけてもいない眼鏡のブリッジをあげる。
「運命なのだよ」
「きゃー似てる似てるー! 真ちゃんだー!」
 完成度の高いモノマネを披露した高尾に、は声をあげて喜んだ。

 ほどなくして鍵の開く音がした。自転車を挟んで高尾の隣に、が収まった。からからとチェーンのまわる音を聞きながら、二人は橙色の帰路を辿る。
「あ、でもね。中二のとき一回だけクラス離れたことあるの。それ以外はぜんぶ一緒」
 が思い出したように、ぽつりと小さく呟いた。

「でね、私いままで真ちゃん以外に友達いなかったから、学校嫌になって行かなくなった」
「ほんとオマエ、どんだけ真ちゃん一筋よ」
 高尾は半ば驚きながら、肩をすくめた。
「違うし。真ちゃんと一緒にいすぎて真ちゃん以外と仲良くなれなかっただけだし……!」
「女友達とかは?」
「話合わないからいなかった。中二まで」

 苦々しく、が顔を歪めて笑う。昔の彼女の姿はなんとなく察しがついた。おそらく今となんら変わらず、変わり者の緑間の後ろを雛鳥のように追いかける、変わり者の女の子だったのだろう。
「中二からはできたんだ?」
「うん、めっちゃいい子。あのね、バスケ部でマネージャーしてた子なんだけどね――」
 先ほどの表情とは一転し、柔らかく朗らかな笑みだった。が、言いかけて思いとどまりはそこで言葉を切った。

「あ、ごめん。知らない子の話されてもわかんないね」
「オレは別にいいけど?」
 とは言うものの、高尾の親切心に甘んじるわけにもいかない。
「っていうかね、真ちゃんが橋渡ししてくれて、その子と仲良くなったんだよね」
「あいつマジツンデレだな」
「でしょー真ちゃんほんと可愛い」
 二人は自転車越しに視線を合わせ、宝箱を覗く子供のように笑った。中身は、自分たちだけの秘密だ。