「青峰大輝ー! ここで会ったが百年目、盲亀の浮木、優曇華の花、いざ尋常に勝負なり!」
 校内清掃の時間。もはやこの光景は恒例になりつつあった。
 真っ直ぐに振り下ろされるモップの柄を、青峰は手にしていた箒の柄で受け、そのまま横に流す。
「上等だ! オレが勝ったらおっぱい見せろよ!」
 今度は青峰が箒の柄を振りかぶった。もそれをモップの柄で押し返す。
「私が勝ったら明日の朝礼でパンツ見せやがれ!」
 両者一歩も譲らず、鍔迫り合いとなったところで弾き合う。それが数回と続けられた。
 は一瞬よろりと体勢を崩したが、またすぐに構えて目の前の青峰を見据える。柄と柄の打ち鳴る音はまるで、鋭い剣戟の音を思わせた。
「頑張れー! お前にポテチ二袋も賭けてんだからな!」
「頼むぞ青峰ー! 今日こそ決着つけてくれ!」
 周りで見ている男子生徒がこぞって青峰やを囃したてる。
 二人は持ち前の運動神経を駆使し、流麗なまでの体さばきで打突を繰り返した。
「やるな、!」
「青峰くんもね!」
 ギリギリと柄をあわせて火花をちらすだったが、突然ぐいっと制服の襟を引っ張られた。不意をつかれ、思わず引かれるままに体勢を崩す。振り返らずとも、誰かはわかった。
「あーーーー! 真ちゃんだめ、締まる締まる締まるっ!」
 緑間はの襟首をつかみ、ズルズルと引きずっていった。ここまでが、お決まりの展開だ。呆気にとられていた女子たちはほっとした表情を浮かべ、囃していた男子たちも掃除にもどった。
「てめ緑間、まだ勝負ついてねえぞ!」
 教室から青峰が顔をのぞかせて、緑間に抗議する。
「青峰、オマエも真面目に掃除するのだよ」
「うっせー」
 めんどくさそうに青峰が言い捨てた。

 緑間を介し、青峰大輝と知り合ってからというもの、隣のクラスから毎日のように勝負をしかけに来るであったが、未だ二人に決着のついた試しがない。初めのうちは緑間も素知らぬふりをしていたものの、あまりにも見るに堪えないの振る舞いにとうとう世話を焼く羽目になったのだ。
「無念じゃー! おのれこの恨み晴らさでおくべきかー!」
 手足をばたつかせて騒ぐに、緑間は腕を組んで向き直った。レンズの向こうの瞳には、苛立ちと呆れの色が半々に見てとれる。
「毎日毎日いい加減にしろ
「だって、真ちゃんに会いたかったの。真ちゃんてば私に会えなくて、寂しくない?」
 は唇を少しとがらせ、憐憫を乞う仔犬のような目で緑間を見上げる。
「いないほうが平和でいいのだよ。少しはオレの身になれ」
「……じゃあたまには、私が真ちゃんのお世話するから」
 これは名案だとばかりに、は口元に笑みを浮かべて、長いまつ毛を何度も瞬かせた。
「なんでそうなるのだよ」